サーバを引っ越しすることで、OSを始めとするミドルウェアの環境が変わり、アプリケーションすなわちコンテンツやプログラムの互換性問題が起きる可能性があることは周知されていますが、引っ越しに伴うドメイン管理やネームサーバ管理の移行については少しおざなりにされがちです。また引っ越し期間中は費用も新旧重複してかかりますので、なるべく短期間に済ませたいものです。
弊社ではたびたびサーバの引っ越しを業務として請け負っておりますが、以下の手順を基本とすることでサーバ引っ越しに伴う問題を軽減することができます。
与件例
・W社のVPSからS社のVPSにサーバを移管する
・ドメイン管理業者(レジストラ)も移管したい
・上記に伴いネームサーバ(DNS)の移管が必要
(1) 現状のISP(プロバイダ)への解約通知
ISPサービスの解約は約款上1ヶ月から数ヶ月前の通知が必要とされていることが多いので、サーバの引っ越しが決定したら、まず真っ先に実施したいタスクです。
(2) ドメインの管理業者(レジストラ)移管
レンタルサーバ契約とドメイン管理サービスがセットになっていて解約を余儀なくされたり、移管作業をスムースに行うために任意のタイミングでWhois情報を書き換える必要があります。したがってコントロールパネルでドメイン情報の管理が容易に行えるドメイン管理業者へ移管することをお勧めします。経験的にはISPやホスティング系よりドメイン登録に特化したサービス業者をお勧めします。この時点で気を付けたいのは、レジストラ移管が済むまでWhois情報のネームサーバは書き換えを行わないことです。
(3) 新DNSの設定
私の経験上、Webやメールのサービスを行うサーバとネームサーバ(DNS)は共存しないことを推奨しています(危機意識の低いDNS構成)。なお上記の移管先レジストラの選定条件として、DNSサービスがセットになっているサービスをお勧めします。それを前提として新たなDNSの設定ですが、ゾーン情報に定義するIPアドレスはNSを除き、現行サーバを指したままとしてください。NSにはこのレジストラが提供するDNSサービスのホスト名を定義しておきます。またDNSのIPアドレス書き換えに備えてTTLを少し短めにしておくとよいでしょう(3600以下)。
(4) ネームサーバの切替え
新レジストラのドメイン情報管理画面でwhois情報のネームサーバの書き換えを行います。ネームサーバには(3)で記述したNSのホスト名をプライマリとセカンダリともに指定します。この作業を行うことで当該ドメインのネームサーバが新しく設定した方に切り替わります。このWhois情報の書き換えがインターネット全体に波及するには1~2日かかるようです。
(5) レンタルサーバの申込み
最近のレンタルサーバはオンライン上での申込みから利用開始までに、当日中や一両日中に設定が完了することが多いので、あまり契約を急ぐ必要はありません。早く契約してしまうとそれだけ現行サーバとの重複期間が長くなり料金が無駄になります。なお専用サーバでも概ね1週間以内程度で利用できるかと思います。
(6) レンタルサーバの設定
詳細はケースバイケースなので割愛します。
(7) アプリケーション(サイト)の移設・動作検証
詳細はケースバイケースなので割愛します。この段階ではDNSがまだ現行サーバに向いていますが、PCのhostsファイルを記述して新サーバのIPアドレスに強制的に書き換えを行うことで、本番に近いテストが可能です。
(8) 新サーバへIPアドレスを切り替え
十分なテストを行ったのち、いよいよ新サーバへIPアドレスを切り替えます。(3)でDNSのTTLを短縮してあれば、比較的すぐに新しいサーバへのアクセスが出来ると思われます。ちなみに慎重を期すならば、サーバ切替直後はサービス公開を関係者のみに限定し、最終チェックを行ったのちに一般公開するのが安全ですね。
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